「・・・さん。」
「・・・・・・・さん!」
「コンリ・オンリさん!?」
肩から手紙の入った鞄を重たそうに背負ったタルタルの少年が必死に呼びかける。
・・・といっても年齢は分かりにくい容姿ではあるのだが。
「おーーーーーーーい!
・・・・だめだぁ。 お手紙ですよ~~、ここに置いておきますね~~見てくださいよ~~~?」
呼びつかれてグッタリとする少年に、ヨンリ・オンリはようやく意識を少年に向ける。
「ああ・・・すまない、俺に手紙とは珍しいね・・。」
手紙を受け取ろうと、手を伸ばす。
「魂抜けてるのかと思いましたよ~~。いつもそんな感じと言えばそうですけど・・・。」
今日は特にひどい。
と、少年は付け足す。
「えっと・・・。ちょっとボロボロになった手紙なんですよ。異国で拾われて、届けられたって事みたいです。」
異国・・・?
はいっと渡されたボロボロの封筒には、確かに「ヨンリ・オンリ様へ」と書いてある。
ひどく読みづらい字だ。
震えてるような。
裏を見て、ハッとする。
「これは・・・。」
表情が変わったヨンリをみて、少年は問う。
「彼女ですか!」
顔がにやけているぞ、少年・・。
「きになるかい?」
と問うと、少年はもちろん!と胸を張る。
仕事はどうした、キミ。
まあいい。と一呼吸置いて、ヨンリは棚から手紙を取り、少年に見せる。
「私と彼女の、遠く・・・短い時間のひとかけらだ。興味があれば、読んでみればいい。」
少年はぱっと笑顔になると、早速手紙をあさり出すと首を傾げてしまう。
「どれが1枚目だろう?」
だめだこりゃ。
親愛なるコンリへ
お元気ですか?
魔法の勉強は順調に進んでいるでしょうか。
ボクと一緒に居ないからって、怠けてはいけませんよ?
キミと離れてしまって、何処にいるか心配でしょうか。
ボクは今、タブナジアに居ます。
聞いてください!なんと、今有名なアルタナ連合軍に入隊したのです!
噂は届いていますよね。ジュノ・ウィンダス・サンドリア・バストゥーク各国が手を組む大軍隊です!
ボクはその中の一人に過ぎませんが・・。
タブナジアに行けるのは、実力があるからなんだそうです。
ちょっと誇れますよね。
良い事ばかりではありません。
種族の違いか、連携がなかなか取れないんです。皆、石の様にガンコなんです。
私もその中の一人ですけどね。ふふふ。
明日からは実践が入りそうです。
また、手紙を書きますね。
天晶暦 863 遠い地より愛を込めて
補足
タブナジア
タブナジア侯国として存在していたが、滅んでしまった国。現在では、タブナジア地下壕として脚を運ぶ事が可能。
崩壊直前の首長は侯爵アルテドール・I・タブナジア。
獣人に滅ぼされたとされる。
それもあるが、最終的に滅んだ理由は・・・。
アルタナ連合軍
天晶暦862に勃発したクリスタル戦争の時に、ジュノ大公カムラナートの提案によって結成された、4か国の連合軍。
天晶暦
ヴァナ・ディール、特にアルタナ四国で標準的に使われている暦法。略称は 「C.E.」。ちなみにアトルガンはこれを使用していない。
フィクションでs
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